ふとんで年越しプロジェクト報道(1.10現在) |
「ふとんで年越しプロジェクト」に関する記事が掲載されました。
我々TENOHASIの活動、森川代表らの活動も
紹介されています。
写真もたくさん出ているので、ぜひリンク先をご覧ください。
http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2014_0109.html
路上の年越し支援で見えたものは 1月9日 16時20分
例年より役所が閉庁する期間が長かったこの年末年始に、
ホームレスなどを支援する都内の民間団体が連携して、
生活に困った人たちへの炊き出しや宿泊場所を確保する
「ふとんで年越しプロジェクト」が初めて行われました。
福祉や医療の専門家が連携した取り組みで、
路上で過ごす人たちの厳しい実態が改めて浮き彫りになりました。
ネット報道部の山田博史記者が取材しました。
厳しい寒さの中で炊き出し
夕暮れとともに厳しい冷え込みとなった
12月29日夕方の東京・池袋の公園。
炊き出しのカレーから立ち上る湯気のそばに、
食事を求める人たちの長い列ができました。
並んだのは、約150人。
新宿から1時間かけて歩いてきたという男性(55)は
「3年前に職を失ってから路上生活を続けています。
今は1日2000円から4000円位の仕事が不定期に見つかるくらいで、
炊き出しは助かります」と話しました。
また、生活保護を受けているという男性(40)は
「日雇いの仕事をしていますが、若い人が優先されてなかなか雇ってもらえません。
アベノミクスで潤っているのは大企業だけではないですか」と話しました。
池袋で炊き出しを続けている
NPO法人「TENOHASI(てのはし)」代表で
医師の森川すいめいさんによると、
並ぶ人の数は派遣切りが問題となった
5、6年前の半数以下に減りましたが、
高齢者や障害者などが目立つと言います。
森川さんは「今の福祉の制度で救われない方が路上に残され、
問題が複雑化していると言えると思います」と話しました。
生活困窮者へのシェルター確保 支援団体が初の連携
今回の活動に参加したのは、
ホームレスなどへの支援に取り組む都内各地のNPO法人などです。
これまでは各団体が池袋や渋谷
、新宿、山谷などそれぞれの拠点で越年の炊き出しなどを続けてきました。
しかし、病気の人や体調が悪い人などが安心して休めるよう
な宿泊場所を用意することは費用の問題もあってなかなかできませんでした。
ことしは特に役所の閉庁期間が長いことから、
共同で寄付金を集めてビジネスホテルなどの部屋を確保し、
支援が必要な人に「シェルター」として利用してもらうことにしました。
インターネットで呼びかけた結果、
寄付金は120万円に達し、池袋駅周辺に15部屋を確保しました。
路上での越年が厳しい人に暖かいふとんで
年を越してもらおうとの趣旨で、
「ふとんで年越しプロジェクト」と名付けられた初めての試み。
役所が閉まったあとの先月28日以降、
都内の炊き出し場所を医師などが巡回し、路上で過ごしている人たちの健康状態などを確認してシェルターを活用しました。
路上生活厳しい人が“ふとんで年越し”
シェルターには、路上で体調を崩して
行き場のない人たちが次々と入りました。
40代前半の男性は、自営業の廃業などで年末に住む場所を失い、
大みそかに新宿駅で一夜を過ごしました。
腹痛を抱え、元日に訪れた新宿の炊き出し場所で
今回の取り組みを紹介されてシェルターに案内されました。
男性は「ぐっすり眠れました。正月休み明けに会社の面接を受けるので
汚れた姿で行かずに済んで助かりました」と安心した様子で話しました。
その後、面接に合格して仕事と住まいを確保できたこの男性は、
「会社がつぶれて公園に行くしかなくなった人を
一歩手前で救う取り組みを行政にも求めたい」と話しました。
また、派遣の仕事と路上生活を繰り返していた40代の男性は、
10日間ほど、昼間は公園などで休み、夜間はひたすら街を歩く路上生活を送っていました。
今月2日にシェルターに入り、「どうしようかと思っていたのでありがたいです。まだなかなか眠れないこともありますが、早く仕事を見つけて落ち着きたいです」と話しました。
年末年始の9日間にシェルターを利用した人は約20人。
背骨に難病を抱えた男性や、知的障害のある男性、アルコールが原因で肝臓病を患った男性などで、用意された部屋は満杯になりました。
いじめや借金など、過去につらい経験をした人も目立ちました。
いずれも休み明けの6日から7日にかけて、
就職や生活保護の申請など、
それぞれの事情に応じてアドバイスを受けてシェルターをあとにしました。
今回のプロジェクトの呼びかけ人の1人、
大西連さんは「知的障害やアルコール依存など複雑な事情を抱えた人や、
仕事も住まいも不安定な人が多く、
問題の深刻さを改めて実感しました。
福祉チームと医療チームが連携したことで
困窮者のニーズに合わせて総合的に支援する活動ができたと思います」と活動の成果について話しました。
公園使用巡り浮かび上がった課題も
今回の取り組みの中では、
支援活動をする場所を巡る課題も改めて浮かび上がりました。
渋谷区で15年間にわたってホームレスへの支援を続けている団体「のじれん」は、
公園や都の施設で炊き出しを続けてきましたが、
活動拠点としていた公園が3年前から相次いで夜間施錠されたり、
施設が改修工事で閉鎖されたりと、
ホームレスの居場所が次々となくなってきたといいます。
今回は年末年始が長いことから
、夜間施錠される宮下公園にテントを設営して越年することを決め、
先月、渋谷区に夜間も公園を開放するよう申し入れました。
しかし、区は認めず、越年の活動を始めて2日目の先月29日夜、
支援団体やホームレスの人たちは立ち退きを迫られ、
別の公園に移動することになりました。
「のじれん」の木村正人さんは役所の対応について、
「災害などで困ったときに頼る公共の場所こそ公園。
越年のホームレス支援は役所がやらないことを行っている活動であり、
結局、行き場のないホームレスをさらに見えない場所に追いやるだけだ」と批判しています。
一方、渋谷区公園課は「公園を管理する立場で、
公園のルールに従って対応した。
支援団体は24時間使用できる別の場所を考えるべきではなかったか」と話しています。
都内では、公園での炊事が制限されるなどの動きが強まり、
支援団体の活動が難しくなっているという声も上がっています。
「予算の限られている民間団体にとって、
お金のかからない公園はいちばん活動に適しているのですが」。
あるNPO法人のスタッフはこぼしました。
東京23区では、生活に困って行き場のない人を受け入れる施設として、
働く意欲のある人を受け入れる自立支援センターや、
自立した生活のできる人を対象に一時的に民間のアパートなどに入ってもらう
緊急一時宿泊事業などがあります。
しかし、病気の人や高齢者の受け皿にはなりにくく、生活保護などを受けなければ路上生活になってしまうという実態もあります。
生活困窮者の支援 問われる福祉行政
今回の活動を前に、
先月、「ふとんで年越しプロジェクト」の中心メンバーは、
2度にわたって厚生労働省を訪れ、年末年始の生活保護の申請受け付けや
困窮者への食事や宿泊場所の提供などを行うよう各自治体に徹底させてほしいと申し入れました。
これに対し、厚生労働省は、
閉庁期間も生活保護の申請は可能と答えましたが、
各自治体の対策については「それぞれの判断に委ねる」と回答するにとどまりました。
国の調査によると、
ホームレスの数は全体的には減少傾向にありますが、
今後は高齢化が進むとともに、
高齢者など、より支援が難しい人の割合が増えるとみられています。
プロジェクトの呼びかけ人の大西連さんは
「国の基本政策は自立支援ですが、
病気などで制度にのれない方への支援を
今回はわれわれが補った面があると思います。
今後は通年でも各団体がどんな連携ができるか考えたい」と話しています。
こうした民間団体との連携も含めて、
路上生活を続ける人たちの複雑化する状況にどう向き合って
施策を打ち出していくか、改めて福祉行政も問われています。
以上。